みちべぇの道

道だとか橋だとかが好きで、走ったり歩いたり道に迷ったり

モヤモヤ大菩薩峠

雨の土曜日、散歩がてら隣市のパン屋に行った帰り道、夫が「明日、晴れたら硫黄岳に登ろうかな」と話しかけてきた。

「硫黄岳? 八ヶ岳連峰の硫黄岳?」「そう」

「はぁ、行って来てください」

夫の「登ろうかな」は「一緒に登ろう」という意味だと解っているが、思わず「行けば」的な返答をしてしまった。

だって、八ヶ岳ですよ。私を誰だと思っているのよ。

ダラダラと外を歩いたり走ったりするのは好きだけど、筋力もバランス力もなく、その上ビビリだ。八ヶ岳といえば上級登山者が登る険しい岩山じゃないの?そんな山に明日登るとな? 何の予習もしないで「うん、わかった」と返答できるはずもなかろう。まず無理だ。無謀にも程がある。八ヶ岳が怒るよ。しかも、ここ数日天候不順だし、今現在雨降ってるし。

 

心の中で「無理」を連発したものの硫黄岳がどんな山か気になり、家に帰ってから調べてみた。

硫黄岳は南八ヶ岳の最北に位置し、標高2,760mの火山です。
山頂は平坦で広く、南アルプス北アルプス、南北八ヶ岳のほぼ全域を見渡せます。

全コース鎖場などの難所はなく、登山初心者向けと言っていいと思います。

へぇ、初心者向けで眺望が素晴らしくて標高が高いから涼しいね。「てんきとくらす」を見ると登山指数Aとある。私でも登れるかな?にわかに行ってみたい気がしてきた。夫に

「硫黄岳、行ってもいいかも」と言うと、「いや、大菩薩にしようと思う」と夫。

へ?硫黄岳やめたの? 行き場を失った硫黄岳への期待と覚悟が、胸の中でモヤっとする。

山梨の大菩薩峠には過去に2回、峠から更に登る大菩薩嶺には1回登ったことがある。いずれも天候に恵まれず、雲の中で視界はなく、強い風に吹かれて寒かった記憶しかない。晴れれば南アルプス秩父の山々が見えるらしい。

そりゃ雄大な景色をみることには やぶさかではないので、「行きましょう」と答えた。

夕方、夫「今日は早めに夕飯を食べて早く寝て、明日は早く出よう。麓の駐車場は8時には満車になるから」と指示を出した。

はいはい、と読んでいた本を閉じ、パタパタと夕食の支度をして17時に食べ、パタパタと片付け入浴を済ませ、登山の準備をしていると

夫、PCを見ながら「なんか、大気の状態が不安的だな、山は雷が来るかも」

いいけど、登山の支度する前に、できれば大慌てでご飯食べる前に言ってほしい、と思ったが口には出さず「明日はやめるの?」とだけ聞くと「ギリギリまで天気見て決めよう」と答えが返ってきた。

ギリギリっていつ?取り敢えず準備しておけばいいか、と山支度を整えて就寝。

 

翌日、4時半に目が覚めると夫は寝ていて、登山の準備もしておらず、「今日は行かないのね」と判断する。

なんだかモヤモヤする。私に説明がなさすぎる。夫に振り回されている気がする。

 

そのまた翌日、月曜日の朝3時に起こされ、車で山梨に向かった。

大菩薩嶺百名山だからヤマスタのスタンプがもらえるな、とホクホクしていると、夫が「今日は大菩薩嶺には登らないよ、山頂は(木があって展望が悪く)つまらないから。大菩薩峠まで行ったら降りる。」更に「今日は鳥を見るのがメインだから日川湖のほうの遊歩道も行ってみよう。山は二の次」と。

えっ(゜o゜) 山がメインと思ったから、双眼鏡も小さいサイズのを持ってきたよ。

モヤモヤモヤモヤ、ざっくりでいいから計画を話してほしいと言おうとしたが、怒りで言葉を発する気になれず。助手席で怒りの炎を燃やしながら静かに座っていた。

どうしてこんなにモヤモヤするのだろう。夫のマイペースは今始まったことじゃないのに。私の精神状態が良くないからか。自分の就職の方向性がこの期に及んで決められないとか、この頃、肩首がだいぶ楽になってきたと思ったら寝違えて首が回らなくなったとか、口内炎ができそうとか、あまり調子が良くない状態ではあるが。

 

まあ、いずれにせよ夫に腹を立てても良いことはない。真面目な人で、よく働き、こんな私に文句を言ったこともあまりない。こうして山や旅行にも連れていってくれる。不満なんか言ったら申し訳ない。

ただ、夫は私に興味がなくて気配りが足りないだけだ。それはお互い様とも言えるし、むしろ妻を放っておいてくれる夫に感謝している。よし、問題などない。

 

気持を切り替えよう。山を楽しもう(自分に言い聞かせる)。

 

山は、とても気持ちよかった。

 

苔の森。岩に根をはっている木々たち

 

クェー、みたいな声がした。クェー、クェー、クェー… 頭上の木にカケスのファミリーが飛んできたのだ。5~6羽いたかな。

 

カケス、全体をちゃんと見たのは初めて。羽の青が綺麗だった。

 

緩やかな登り道、鳥を探しながらゆっくり歩いた。コマドリがあちこちで鳴いているが、まったく全然見つからない。すぐ近くでヒンカラカラの声がするのに鳥影が見えない。結構しつこく探したけど姿を見せてくれなかった。忍者のような鳥だ(私が見つけられないだけ?)

コサメビタキが、木の枝にとまり、飛んでいき、またもどってとまり、また離れ、戻って…を繰り返す。動作がヒタキ類って感じで面白い。

 

コースタイム1時間30分のところ、2時間半以上かかって大菩薩峠へ。

 

 

峠ではビンズイのつがいが巣作りをしているようで、巣材のようなものを咥えて同じ場所を飛び交っていた。

低い木の先端にとまっているお腹の白いモズはチゴモズだろうか。

 

大菩薩峠からこのゴロゴロ岩を登ると

 

 

大菩薩嶺(2057m)が見える

 

大菩薩嶺に続く道。今回は行かなかった(;一_一)

 

眼下に日川湖。雲が舞っている

 

雲間から南アルプスが見えたり隠れたり

 

こちらは秩父の山、見えませんね(;^ω^)

 

富士山が出てきた

 

4度目の大菩薩は、まあまあの好天だった。雲は多かったが、その雲の形が刻々と変わっていく様子が楽しかった。風は涼しく、遠くの山を見ていると清々とする。

 

夏は山がいいよねぇ(#^.^#)。

私のどうということないモヤモヤも、あの雲のように風に乗って消えていくことを願ったのだった。