みちべぇの道

道だとか橋だとかが好きで、走ったり歩いたり道に迷ったり

雪国の女子高生

静かな朝

しんしんと静かな朝

静寂の深さは雪の深さ

外は大雪 見なくても解る

無音の奥から 微かな音が近づいてくる

シャンシャンシャンシャン 線路の雪を飛ばす除雪車の音

5時か 母親が起き出す時間だな

私はもう少し寝よう

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外に出ると、案の定 雪がモカモカ降っている

傘に雪が積もってすぐに重くなる

バサバサと傘を開閉して雪を落とす

 

そんなことより問題は道路の消雪パイプ

道路に埋め込まれたパイプから水が弧を描いて飛びだしている

na-nagaoka.jp

(↑は長岡ですが、実家はもっと田舎の僻地です)

 

道路は水と、水を含んでグシャグシャになった雪であふれている

 

消雪パイプの穴から出ている水が、あちこちで暴走している

噴水のように、横方向にまたは上方向に数メートル飛び 襲い掛かってくる

足にかかりそうな水を、傘を盾にしてよけると

別の方向から飛んできた水が、頭上から降り注ぐ

雪国の冬は、寒いというより冷たい

 

駅に着くと、ちょうど列車がやってくるところだ

早朝、除雪車が雪を飛ばしたのに 線路には既に20センチは積もっている

その中を、只見線ディーゼル列車は雪をかき分けて進む

頼もしい

只見線の乗車ドアは当然手で開ける

時々、凍って開かない

いつだったか、帰りの列車で駅に着いてもドアが開かず

無人駅なので気づく人もおらず、そのまま出発して

次の駅まで行ったことがあった

兄に車で迎えに来てもらった

ーーーーまた脱線したーーーー

 

学校のある町の駅に到着した

学校まで歩いて30分

雪国の町は「がんぎ」といって

商店街の歩道に屋根がついている

がんぎはありがたいね

といって油断してはならない

消雪パイプの水が、そしてグズグズになった雪が

車が通るたびに跳ね飛ばされてくる

頭をかばうと足が

足をかばうと顔が

シャーベット状の雪を浴びる

 

がんぎ、屋根だけじゃなくて壁もあればいいのに

 

ようやく学校に辿り着く

廊下には色とりどりのオーバーコートが掛かっている

教室のストーブの周りにはクラスメートが集まり

濡れた服や髪を乾かしている

「あれ?サチは?」

 

友だちのサチは、うちより更に山奥に住んでいて

一年中スクーター通学している

冬はタイヤにチェーンを巻いて

山道を下ってくるのだって

スクーター用のチェーンなんてあるの?

サチは真面目な優等生なので絶対に遅刻しない

でも、もうすぐ始業のチャイムが鳴るよ

 

そのとき、サチが教室に入ってきた

息を切らして、ほっぺが真っ赤だ

「山道を走ってたら、目の前で軽い雪崩があって道をふさがれた

 他の通行人と雪をどかしてから来たから遅くなった」って

 

命がけじゃないの Σ(・□・;)

雪国の女子高生はたくましい

 

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一昨年の春、帰省した。

雪を残した八海山は雄大

春の花々が一斉に咲く故郷は美しかった。

「新潟もいいね、年とったら新潟に住もうかな」友人に言うと

「無理だよ、やめたほうがいい」即、反対された。

関東あたりで長年過ごした者に冬の雪国の生活は過酷すぎると

 

彼女は高校生のとき、「曲り屋」という伝統的な古民家に

お母さんとお姉さんの3人で住んでいた。

曲り屋の屋根は茅葺だ。

冬、屋根の雪下ろしは本当に大変で

彼女は、屋根にガソリン撒いて火を着けようかと思ったそうだ。

「そうすれば、雪が消えるでしょ」

うーん、家も消えるが

今は、家を建て直し

旦那様も息子さんもいるが

雪下ろしが超重労働であることにかわりはない。

 

 

雪国の皆さま、お見舞い申し上げます。