2日目
上原(うわっぱら)で朝食を
朝、5時に目が覚めた。
台所は既に灯りがついていて、キドが立ち働いている。
私「おはよう、早いね」
キド「遅い!」
あれ?怒られた。
今日は上原に登って朝ごはんを食べようと言っていた。
上原は標高300メートルくらいの低山、というより高原かな。山の上は畑が広がっていて、ここで穫れる野菜は質が良いのだそうだ。観光のためのコスモス畑も、今が見頃。
キド家の隣の道路が登り口で、車も通れる道を30分も歩けば頂上に着く。慌てる必要はないし、まだ薄暗いよ。
キド「雲が出ているから、上は雲海になっているかも。急げ」
そういうことね。雲海が消える前に見たいよね。急ごう。と言いながら淹れてもらったコーヒーを飲んでから出発。
雲なのか霧なのか、ガスの中の急な坂道を歩く歩く、ズンズン歩く。時々走る。
途中で写真なんか撮っていると、キドはどんどん先に行ってしまう。待ってくれ~💦
空が明るくなっていく。雲海、間に合うかな
間に合った。越後三山が浮かんでいる。右から八海山、中の岳、尖がっているのが越後駒ケ岳、その左のデコボコは荒沢岳(と教えてもらった)
権現堂から日が出てきた
太陽から広がる羊雲。上も雲、下も雲
これもクモ
・・・の巣。
だってキドが「面白いから撮れ、柵を乗り越えて巣に近づいて撮れ」って言うものだから、柵を跨いで崖から落ちないように気をつけながら撮りましたよ(;^ω^)
朝霧の水滴をいっぱいつけたクモの巣は、太陽の光を反射し、風に吹かれてフワフワ揺れていた。
日が昇ると足元の雲海が薄れ、村が現れる。
山波もはっきりクッキリ。駒ヶ岳いいなぁ、登ってみたいわ(上級者向けの山だそうです)。
刻々と変化していく風景を見ながら、キドが用意してくれたおにぎり、ソーセージ、漬物等々をいただいた。デザートのシフォンケーキがすこぶる美味であった。
帰りはのんびり歩いて下る。
途中、昔よく遊んだ墓場に寄り(ワタシら、墓場を遊び場にしていたバチ当たり且つヘンな子どもだった)、キド家の墓でご先祖様にお参りし、飛んできたエナガを双眼鏡で二人交互に見て、山栗を結構本気で拾い、廃校になった元小学校に降りた。
100年以上の歴史があった小学校は、私も母も祖母も卒業生だ。(母と祖母の時代は尋常小学校)今は、保育園になっている。
校舎も、校門の横にあった大きなイチョウの木も、アメリカシロヒトリが大発生したポプラもなくなっていたが、校舎から見えた山々はそのまま(当たり前)、そして学校の端っこに杉林が残っていた。杉林の中には、子供たちの遊び場だった台が残され、廃校時に立てられた記念碑が乗っている。
当時は、昼休みや放課後になるとこの台の上で「回り鬼」や「靴取り鬼」という素朴な鬼ごっこをして遊んだ。十人以上の児童がこの上を駆けまわっていたと思ったが、今見ると、こんなに小さかったっけ?と感じる。
家に戻って一休みしたら、次は只見線に乗って入広瀬の鏡ヶ池に行こう。
鏡ヶ池で昼食を
只見線の社内で、「NHK」の腕章をつけた撮影隊に遭遇した。
むむ、間違ってテレビなんぞに映りたくない。キドは仕事お休みもらってこんなところで遊んでいるのがバレたら面倒だし、私は地元に帰っているのに実家に寄らないのが兄たちにバレたらやっぱり面倒だ。二人でコソコソと撮影隊に近づかないように気配を消す。
入広瀬駅で列車から降りると撮影隊も降りてきた。私たちの前を立ち止まったり動いたり、新潟放送局のアナウンサーが何やらレポートしている。もうっ、早く行ってよ。またソロリソロリと挙動不審な動きをしながらカメラの横をすり抜けた。(よけい目立つわ)
鏡ヶ池は、風が吹いていてあまり鏡っぽくなかったが綺麗だった。ブナの立派な木の下を歩き、サルノコシカケの上に乗っているアマガエルを眺め、ブラブラと池を一周した。
お昼は「ごっぽうそば山ごっつぉのせ」と山菜の天ぷらとビール
「ごっつぉ」は「ご馳走」のことね。山菜とキノコが山盛り乗っている。あと豆腐も。私の好きな山ウドもたくさん入っていて満足(#^.^#)
夜はやっぱり囲炉裏、と星空
夕方、帰ってきて炉端で飲みながら、むかーーーしの写真を見せてもらった。その中に「保育所入所式」と裏に記されたモノクロ写真があった。保育所の外階段に園児がズラリと並んで写っている。キドは最前列でカメラに笑顔を向けている。私は、、いない。写真を撮られるのを嫌がって逃げたか、わざと下を向くか誰かの後ろに隠れたか、入所式自体ボイコットしたのかもしれない。保育所の頃の記憶は、とにかく行くのが嫌で泣き叫んだ思い出しかない。あの頃からドロップアウトしてたからなぁ。
キドはキチンとした子だったのに、よく私のような落ちこぼれと付き合ってくれたものだと、今更ながら不思議に思う。
とっぷりと日も暮れ、三日月が西の空に沈み、夜になった。
星が出ているかな、と外に出ると、頭の上に夏の大三角形が見えた。
外灯と車のライトと近くの野球場のナイター照明があり、真の暗闇にはならない。
それらの灯りを避けてあちこち歩きまわり、目が慣れてくると、おお、天の川がうっすらと見える。そうこうしているうちに野球場の照明が消え、星たちは輝きを増す。
二人で空を見上げていると、天頂付近で一瞬 星が流れた。
「見た?」「見た」 白く明るい流れ星だった。
何だか今回の旅は、気象条件に恵まれているというか自然現象豊かというか、ラッキーだよね。日頃の行いが良いからねぇ、などと どうでもよいことを話しながら、幸せな気分で家に戻ったのだった。
明日は朝ラン ♪
(続きます)